引継ぎ

 会社を半休して、カウンセリングに行って来た。「専門なので」と言う事で、臨床心理士のT主任が私の担当となる事になった。流石に主任だけあって、彼女はもの凄く話の進め方が上手かった。それはまるで、二人で筋斗雲に乗って、山々の間を飛び回りながら風景を見るようにして、過去の出来事を振り返って行く様な不思議さがあった。前回のカウンセリングでだけでも、回復の兆しが見えそうだと感じたし、日曜の撮影は私の中で上手く行ったと思うし、平日の仕事も順調、体力は万全とは言えないが、明らかにすべてが上向きであると感じられ、天気も良かった。だから、「今日は1滴も泣かないかもなー」なんて思っていたのに、3分もしない間に私の目からは涙が止まらなくなっていた。一連の話をすると条件反射のように泣いてしまう。いつか、泣かずに話す事が出来るようになるのだろうか。


 あっという間の1時間半だった。「引継ぎがあったので、予定時間を大幅に過ぎてしまいましたが、今日はここまでで」と言われ、お礼を言って席を立とうとすると、主任に「大丈夫? これから仕事でしょ?」と心配されてしまった。「大丈夫です。泣く事くらい、いつもの事ですから(苦笑)」と返したが、仕事をして帰宅すると、緊張の糸が解けたのか、フラフラで1時間くらい立ち上がる事が出来なかった。


 それから数日、私の調子は良かった。母親から連絡が来るまでは……。ふぅ。親の問題が厄介なんだよなー(苦笑)。