Hommage aux Grands Chefs (2)

 朱雀さんの歴史的解釈に基づいた、今回の食事会を纏めた文章を読んで、そういった“重み”を感想の中に盛り込みたいと思いましたが、難しいです。そうでなくても長いのに。程々になるように努力しつつ、書きたいと思います。


 9/22、大崎の『La Fee Claire(ラフェクレール)』へ伺ったの話の続き。テーマ:小川シェフの『ぼくが尊敬する料理会の大先輩に捧ぐ』


 白ワイン(ALSACE GRAND CRU WIEBELSBERG RIESLING 2001 Kreydenweiss Marc)がサーブされました。クリーンで尚かつ柔らかな甘みのあるワインでした。どなたかが、「これは、ドイツワインですか?」と尋ねると、ソムリエの福永さんは、「いえ、違いますが、確かにドイツワインにもよく用いられる種の葡萄を使って作られています。ドイツワインというのは、それ特有の製法で作られているので、あのように甘みの強いワインに仕上がっているんです」と教えてくれました。


 ワインとほぼ同時に次の料理はやってきました。Alain Chapel(アラン・シャペル:1937-1990)に捧げる料理。エクルビスと緑野菜のテリーヌ、シャンパーニュのサバイヨン(Terrine d'écrevisses et légumes verts , sabayon au champagne)(写真)です。

 世界の6ツ星シェフAlain Ducasseが若き日に彼の料理を食べ、「こんなすごい料理は、おれにはとうてい作れないだろう」と言わしめた、『厨房のレオナルド・ダ・ヴィンチ』Alain Chapelの料理。それのほとんどはリヨンの伝統的な料理でしたが、そこに大胆な創造性を導入し、魅惑の皿を作り上げて行ったそうです。

 このテリーヌは、ホタテをベースに、アスパラとほうれんそうとグリンピースのピュレで作られたそう。Chapel氏のレシピでは、ソースはサバイヨンということになっているそうですが、本当はオランデーズをサバイヨンのように応用したものらしいです。その際、普通はシャンパンのアルコールは飛ばす場合が多いのですが、Chapel氏の場合はそのままドボドボ使っていた、等という裏話を小川シェフは聞かせてくれました。

 味はと言うと、テリーヌの中に入っている材料が渾然一体となっていて、“美味しい新しい何か”になっていました。どれが特出して主張しているのではなく、完璧なハーモニーがそこにはあったと思います。ソースもしかり。勿論、エクルビスはエクルビスの味がしていました。粋なアクセントになっていました。幸せな味でした。

 一旦厨房に戻った小川シェフが生きたエクルビス(写真)を持って来てくれました。「お客様に、何でも食材を見せたくなってしまうんですが、人によっては、見ると食欲が減退されるようですので平気そうな人に……」と少しいたずらっ子っぽく言いながら、小さなトレーを回してくれました。エクルビス(ザリガニ)は、口元を小さく動かしてはいましたが、大人しく観念してトレーに入っていました。


 続く。