ブルターニュ料理食事会 (1)

 8/25、大崎の『La Fee Claire(ラフェクレール)』へ伺った時の事。
注意:(1)では、食べた料理の話は出てきません。


 朱雀さんから7月末に来た食事会のお誘いメールには、8/4と8/25の事が書かれていました。私はそれを読んで、どちらかに伺おうと思ったので、「では、8/4の方にします」と返事をしました。何故って、ちょっと贅沢でしょう? でも、あの創造性溢れるヴェジタリアン・フレンチ・フルコースをいただいてしまったら、他の料理も食べてみたくなってしまったんです。思わず、帰り際、「一旦、出席しないと言いましたけど、やっぱり参加メンバーに入れて貰っても良いですか?」と伺いました。朱雀さんは、「勿論! 歓迎します」と言って、すぐに次のお知らせメールを送って下さいました。

 それから1週間程経った頃、Iさんから「ちょっと、この間、康乃の行ったフレンチ、超美味しそうなんだけど! 噂に聞いたけど、参加メンバー募ってたんだって? 今度行く時は声かけて!」とメールが来ました(ちなみに、今回の写真が上がってから、Sさんからも「次、康乃が参加する時に声掛けて」とメールが来ましたよ)。そうして私は、当日Iさんを連れて、ラフェクレールへ伺う事になりました。


 薔薇の名の付いた台風、11号(MAWAR)が近づく中、私はIさんと集合時間の30分前に大崎の駅に着きました。前回の様に遅刻し、乾杯に間に合わない様にはしたくなかったのです。Iさんは、池袋の老人福祉施設での演奏を終えてきた所で、ふと天使が通り過ぎると、「チャラッチャ〜」と鼻歌を歌い、「は! ゴメン。さっきからずっと『好きになった人』がずっと頭から離れなくて。一番最後にリクエストされた曲だったから」と少し照れて、でもとても楽しそうに笑っていました。でも、照れていたのは私もそうで、Iさんと昼の時間帯に、しかもお互いにちょっとお洒落して会うなんて、初めての事でしたから。そんな気分を払う様に「楽しみ楽しみ」と何度も言いながら、食いしん坊な女2人は、ラフェクレールの前に到着しました。入り口には、めしあさん夫妻がいらして、その奥にはオーナーと挨拶する朱雀さんが見えました。良いタイミングでした。

 10脚の椅子の並んだ長テーブルには、前回の時の様にネームプレートはなく、「好きな席へどうぞ」と言われました。「じゃぁ、窓際が良いな」とゆうさんが言っておふたりが掛けたので、「私も!」と言って、一番窓際の席を初参加のIさんに譲り、その向かいの窓から2番目の席に座りました。私の左側には朱雀さんが掛け、程なくしていらしたサトウさんがその向かいの席に着きました。誰からともなく食べ物の話をし、美味しいレストランの噂話などが始まりました。Kさん、Sさんがいらした頃、シルバーのトレイに乗った大きな大きなオマール海老(写真)と小川シェフがテーブルにやってきました。朱雀さんは、その海老を見て色っぽい溜息をつきながら言いました。「素晴らしい……。こんなに素晴らしいオマール海老を食べられる日が来るなんて!」。

 「これが、昨日ブルターニュから届いたオマール海老です。ブルターニュ産のオマール海老のハッキリとした特徴は、体の色が青い事です。それに対して、カナダ産などのオマール海老は、赤くて模様がないんですよ。後は、力が強く身が締まってる事ですね。空輸する関係なのか、今はハサミにゴムが巻いてありますが、フランスでは鎖が巻かれてるんですよ」小川シェフはそう言って1匹を手に取りました。その瞬間、トレー上で隣り合っていた海老が大暴れを始めました。「凄いでしょう? 届いた時、ゴムが外れてる海老があったんです。危ないですよ! 挟まれたら指が落ちてしまうそうです」、そう言いながらも、「まだ、時間もまだありますから(海老で)遊んでも良いですよ」なんて言葉を残し、笑顔で立ち去りました。


 そんな事を言われたら、触らないでは居られません。早速、そのヒヤリとした体を持ち上げてみました。サトウさんが、「どの位の重さ? 1kgくらい?」と訊くので、少し考えてから、「1kgは無いですね。7〜800gと言った所だと思います」と答えると、めしあさんも別のを持ち上げて「そう……だね。そのくらいかな」と。「どぉして〜? 何でそんな事分かるの?」と言う朱雀さんの問いに、めしあさんは「500mlのペットボトルの重さを思い出して」と答えました。私はそう言う時、いつも砂糖の重さを思い出します。この時は、1kgの袋を思い出していました。それより軽くなる時は、ちょっと間が空いて300g。これは、子供の頃よく作ったスポンジケーキの砂糖の分量なのです。そうか、これから500gを思い出す時は500mlのペットボトルの重さを思い出せば良いんだ……。

 Yさんと佐藤和佳子さんがいらして、出席者が全員揃うと、オマール海老のトレーが下げられました。そして、再び小川シェフが現れ、本日の料理のコンセプトの説明が始まりました。


 「本日のテーマは“ブルターニュ料理”です。場所は、フランスの北側で、寒い地方と言う事もあり、南よりもバターは多め、味もこってりとした料理が多いです。前回とは全然違いますね(笑)。ブルターニュのバターは塩気の強いものが多く、グロッセルと言うゲランドの岩塩が塊で入っているものもあるんですよ。逆に無塩バターは無いですね。ブルターニュはお菓子でさえも有塩バターで作ります。それから、丘の幸と海の幸の併せ方も独特で面白いんですよ」などの、簡単な説明をし終えると、「今日は久し振りに朱雀さんの食事会でフランス料理が出せますね! ここの所、全然ぼくにフランス料理を作らせてくれませんでしたから。楽しみにしていて下さいね」と言い、本当に嬉しそうな笑みを浮かべ出席者を見回してから、「何か期待してる事はありますか?」と訊ねました。サトウさんが子供の様に笑い、「全部ですよ! 強いて言うなら、スパイス!」と言うと、「任せて下さい」と小川シェフは胸を張りました。


 そうそう、小川シェフに「康乃さんって、どの方ですか?」と言われたのでした。「私です」と言うと、「写真ありがとうございます。分からなくてすみません」と言われたので、「あはは。私は、撮られる写真全てで顔が違うんですよ」と返しました。最近、触れ幅が小さくなってきたと思っていたんですが、まだまだみたいですね。本当に、特徴のない顔なんだなぁ、私は。