ヴェジタリアン・フレンチ・フルコース (2)

 8/4『La Fee Claire(ラフェクレール)』に伺った話の続きです。


 次の料理は、野菜のヴァプール(蒸し)、コリアンダーとカルダモンのオイルソース(写真)。グリーン・アスパラガスが主役の料理です。食事が始まる時に朱雀さんが、「フランス人はそれほど野菜を喜んで食べる人種ではない様だけど、春先のアスパラガスは喜んで食べますよね」と言う話されていました。私自身もグリーン・アスパラガスは大好きな野菜の一つ。所謂、夏野菜がメインに押し出されて来るのかと思っていたので嬉しくなりました(既に冬野菜が出てますけど)。

 この皿の凄い所は、全部の野菜が丁度良い加熱と塩加減になっていて、うっすらと掛けられたスパイスと酸味の利いたオイルソースもまた適量で生き生きとしたアクセントになっているという事。小川シェフの説明によると、全ての野菜を別々に、パスタを茹でるくらい塩を入れた湯で茹でてから、塩抜きをし、蒸しているとの事。目眩がしてしまいました。でも、凄く凄く(お馬鹿さんに聞こえるくらい単純な単語で失礼します)美味しかった! 


 ここで、赤ワインが出されました。ソムリエの福永さんがやってきて、Marc Brédif CHINON 2002を注ぎながら、「野菜のコースと言う事もあり、赤ワインの中でも軽めの物を選びました」と仰いました。グラスは、チューリップ型と言うのか、ロゼ用と言うのか、コニャック用みたいな物と言うのか分かりませんが、口の所が一旦細くなって少し広がった形の物。軽め(軽く冷やす位が適温)と言う事もあり、白と殆ど変わらない大きさの物が使われました。嗅ぐと、本当に赤パプリカのような野菜の香りがしました。


 「デザートですか?」と次の皿が出た時、めしあさんは小川シェフに尋ねました。「いえ。まだまだ続きます。もう、お腹がいっぱいになってしまいましたか?」満面の笑みで小川シェフは答えると、めしあさんはそれ以上の笑みで「いえいえ。まだまだ入ります。楽しみにしてます」と答えました。それくらい、次の皿は可愛らしい物だったのです。

 かぼちゃのガトー仕立てオレンジ風味(写真)です。5cm角に整えられた南瓜の上にオレンジ、ヘイゼルナッツが乗り、シェリー・ヴィネガーとポート・ワインのソースが掛けられていました。見た目のチャーミングさで油断して食べてみると、これが本当に大人の味。南瓜の中には、蒸した事によって出た甘みとローストされた事によって出た風味が溢れているのです。それが、完熟したオレンジの柔らかな酸味と合わさって、素敵なハーモニーになっています。それだけでも美味しいのに、このソースがまたエレガントなのです。

 出席者の方々は口々に(しかもかなり大きな声で)、この料理の凄さを褒め称えていて、かなり盛り上がっていました。「ソースがなければ、和食と言っても良いかも知れない。でも、この華やかなソースが掛かった事によって、紛れもないフランス料理になっているんですね!」と仰った言葉を聞いて、何でしょう、私は歴史や文化のようなものを感じていました。


 ギャルソン達によって、ソルベ(写真)がテーブルに並べられているのを眺めながら、小川シェフはニコニコしながら、「次の皿はソルベです。胡瓜と……、もう一つは何が入っているでしょう!」と出席者にクイズを出されました。レモン、白桃、林檎などいくつかのフルーツの名前が出ましたが、答えはパイナップルでした。確かに、よく見てみるとパイナップルの繊維がちゃんと入っています。更に爽やかさを強調する為に、ソルベの下には酸っぱいドレッシングの掛かった胡瓜が敷いてありました。サラダとソルベを一緒に頂く感じです。一見不思議なんですけど、これも合うんですね。失礼な言い方かも知れませんが、本当に色々考えていらっしゃる。いちいち感心してしまいました。

 つづく。