『正直しんどい』

 Oの紹介で、ここ半年の間にアキバ系アイドルのライヴにちょこちょこお邪魔している。この日は、私が最近一番気に入っている女の子Yのソロライヴだった。私がライヴで一番楽しみにしているのは、本当に申し訳ないがMCだ。Yはいつも、若手お笑い芸人の様なテンポ良いトークで、会場を盛り上げ、随所にシニカルな笑いを盛り込んでいる所が良いと思っていた。

 しかし、楽しみにしていたMCは殆どなく、どれもつい最近聴いた曲をただただ繋げただけで曲の流れもコンセプトもへったくれもない構成で、ちっとも盛り上がらなかった。大体、Y自身も、「流れをぶった切る選曲ですみません」と、言い訳にならない言い訳をしていたくらいだし。Yは初のソロライヴに心細くなったのか、始まってから1時間半くらいの所で、ゲストKがイン。3曲だけ歌った。Kは、ものすごい歌唱力とパフォーマンスで、Yの客を完全に踊らせ、歌わせ、多いに盛り上げた。正に「格が違うな」って感じだった。そして、Yとのデュエットで1曲を歌ったあと、ちょっとラフなトークコーナーになった。

 Yはいきなり、「あぁ〜。自分より上手い子をゲストに呼んで、失敗した」と言った。冗談めいた口調で言っていたが、完全に本気の言葉で、その後は完全にジェラシーを隠しきれないトークが続いた。キツイ言葉をKが笑って受け流したり、Yが過剰に自画自賛する台詞が胸をチクチクと刺して来た。

 後半の、Yのソロパート。私は、どんどん切ない気持ちになって、気分が落ち込んで行くのが分った。そのうち、Yが『四分音符が3つ以上続くと最後を8分音符で歌う癖』が気になって来て、「あんなに自画自賛してたけど、そんな歌い方、言葉を大切に歌ってるとは言えないんじゃないの?」とか思い出してしまった。もう駄目だった。『正直しんどい』はこのライヴのサブタイトルだった。