清水ひとみの大女優宣言 vol.4 ワハハ本舗勝栄版

 土曜の夜の昨日、新宿ゴールデン街劇場へ、『清水ひとみの大女優宣言 vol.4 ワハハ本舗勝栄版』を観に行った。2005/10/08に行った大女優宣言につて書いた日記はこちら

 予め、土曜の夜の部は満席なので、絶対に早く来るようコンタさんに薦められていたのに、私が着いたのは、開演5分前だった。みっちり人が詰まった会場。「本当に座れるのだろうか……」と不安に思ったが、取り敢えず持ち物をみんな受付に預け、いざ桟敷席へ!と思っていると、私の直前で桟敷がいっぱいになり、何故か一番後ろのイス席へ。我ながら強運だと思う。

 この公演は、清水ひとみさんが3人の男優と3つのお芝居をするという物だった。一応、タイトルが付いてるが、どれもこれもタイトルと芝居の中身は関係なかった。

 第一話は、省吾さん(ポカスカジャン)との『緑魔子は二度ベルを鳴らす』。お互いに断るに断れない理由で見合いに来た二人が、実は“露出”と言う共通の趣味を持つ同士だと言うことを知る。一度は意気投合するが、コアな趣味にありがちなこだわりのぶつかり合いによって仲違いをし破談となる。しかし偶然の再会(レストランのトイレ)でお互いにお互いの領域に踏み込み合い、理解を深め、そして不思議な結婚するという話。

 オープニング、イスににただ座る二人を20秒ほど見る事になるのだが、清水さんの出で立ちが……、なんて言うんだろう、凄くしっかりしていて魅せられた。途中、“屋外で露出はするが誰かに見られるのは厭”という性癖を持つ役の省吾さんが、こだわりの露出スタイルで、トイレの個室のドアを開けて出てくるシーンが良かった。私は、他人が自分の性癖について熱く語る場面によく出会うのだけど、コアであればあるほど、そこから外れる事の嫌悪感は酷い。行きつ戻りつする心情が迫真に迫っていた気がする。

 第二話は、コンタキンテさんとの『世界の中心で もたいまさこ を叫ぶ』。断酒会で出会った男女の恋の話。酒の席で失敗ばかりの女は、あちこちの断酒会に参加してきたが、あまり止める気はない。男に一目惚れした女は、この断酒会に通いながら男を落とそうと決め猛烈にアタックするが、鈍感すぎる男はまったく気が付かず、やきもきが続く。酒と煩悩との闘い。

 前回、二人がハッピーエンドになるのが納得行かない的な事を書いたけど、今回はそうは思わなかった。二人の好意はすれ違っている様に見えて、男はその女を見、尊敬している様に感じられたし、女は男をどのように落とすかの作戦を綿密にイメージ、把握出来ている様に見えた。それにしても、1ステージに付き、ジュース2杯、生中1杯、水割り3杯を“美味しくてたまらない顔で”一気飲みするコンタさん。……大変な商売だと思う。

 第三話は、土井よしおさん(ワンダラーズ)との『嫌われ石原真理子の一生』。私立探偵事務所で働く女は、ある男の浮気調査を依頼され1ヶ月間尾行するが、思うような情報は得られなかった。業を煮やした男の妻である依頼主は、でっち上げ写真を撮る様に依頼する。女は仕方なく男の元へ向かい、あの手この手で男を誘惑しようとするが……と言う話。

 誘惑シーンの清水さんは、「流石、セクシー寄席!」と言う感じで凄まじかった。抜けてた。あのあり得なさに、淡々と丁寧な芝居で応える、見た目インパクトの土井さんが面白かった。社交ダンスの衣装も凄く似合っていた。最後、情熱的なキスシーンがあって、それは悲しい展開へのきっかけとなるのだけど、なんだかとても美しかった。

 今回も、三話全てが“ある意味”ハッピーエンドだった。私は心根が歪んでしまったのだろうか。昔は何話あっても、「全ての物語はハッピーエンドで終わって欲しい」と思っていたものである。「この世の中は、救いようのない物語ばかりなのに、どうしてこういう風に終わるのだろう」と、会場を出る時には思ったのだが、これを書きながら、それはちょっと違うなぁと思い直した。笑いと言う存在が、救いそのものなのだ。みんなはそこに笑いに来ている。そして、ちょっと救われて帰りたいのである。