横浜トリエンナーレ 2005 (1)

 もう一回行くぞ、と言うつもりで、敢えて(1)と付けさせて頂きます。山下埠頭で開催されている、『横浜トリエンナーレ』へ行ってきました。入場制限ギリギリの17時(金曜の夜だけは21時までやっているので、入場制限は20時です)に入ったので、本当に駆け足で見る事になりました。


 入場ゲートをくぐり、Daniel Bure(ダニエル・ビュラン)氏作品、紅白のストライプによる三角旗のインスタレーションを眺めながら、横浜港の夜景を眺めました。一緒に行ってくれる人を真剣に探さなかった為、ひとりで来たのですが、なんだかそれも良いな、一人デートを堪能しよう、そう思いました。こうやって、落ち着いた気分で海の匂いを嗅ぐのは本当に久し振りで、私は帰ってきたんだ、と、そういう気持ちが体の内側から沸き上がってきました。

 約10分の散歩を終えた先にある倉庫は、想像以上に大きい物でした。池水慶一氏の巨大なイントレで出来た作品は、冷たい表情をしながらも、何故か親しみのある感じで、どうしてかニヤニヤが止まらなくなってしまいました。なんて事無い感じなんですけどね。

 入ってすぐ、右奥の所にタニシKちゃんのブースがあって、3台のモニターではフライトの映像が流れていました。オペラシティで使ったやつかなぁ、等身大のパネルとゴルフカートが置いてありました。Kちゃんは居ませんでした。

 作家名は分からないんですが(後で調べて分かったら書き直します)、会場のあちこちに、会場の風景を織り込んだ立体写真が展示してありました。覗くと、そこに回転している様な黒い(若しくは赤い)影があって、『非現実空間の中の非現実』な、ふんわりとした感覚が味わえて良かったです。あまりにも長時間見過ぎたのか、知らない子供に押されました(苦笑)。

 照屋勇賢氏の作品『警告の森』(ファーストフードをテイクアウトする時に入れてくれる紙袋の中に、それを使って木が一本象られている)は、ストレート過ぎるメッセージ(あくまで私の勝手な解釈ですが)、『紙は木で出来ている→森林破壊』や『テイクアウト→使い捨て』が前面に出ていて、捻たり、おちょくった感じの作品が目立つ中で、清々しさを感じました。単純に、ちょっと綺麗で良かったです。

 行く前に、mixiのタニシKコミュで話題に出ていた、「おっぱいクッション」は、SOI Projectの作品でした。彼等が主催するイヴェントに、SPANK HAPPYが3回出演した事があったので、名前は前から知っていました。サイトも何度か見に行った事もあったんですけど、今回初めて真面目にコンセプトを読みました(苦笑)。イヴェントの盛り上がり方もそうでしたけど、すごく“家”っぽいですね。私は、そう言うのをすんなりと受け入れる事の出来ない人ですが、3度目の正直というか、迷路(も作品です)で迷ってみたり、イヴェントの写真(勿論、菊地成孔氏の写真も貼ってありました)を眺めたり、ガラクタと区別が付きにくい楽器で遊んだりと、どれもこれもゴチャゴチャしているお祭りのような感じに、ようやく暖かさを感じられました。楽しかったです。

 改めて書くほどのことではないのかも知れないですが、奈良美智grafの『小屋』は圧巻でした。狂気じみてる。私は奈良美智氏の作品を観ると、暴力的な気持ちがグラグラと湧いてきてどうしようもなくなって、それに苛々したりうっとりしたりするのですが(つまり好きなんでしょう)、そう言う人の為に(なのか?)、好きなように落書きをぶちまけて良いようなスペースが屋外に設けられていました。もう少し観たかったです。

 3号上屋を一通り観、もう一度Kちゃんのブースに行きましたが、彼女は居ませんでした。仕方ないので「会いたい」メールをしました。4号上屋に移動した所ですぐに電話が掛かってきました。「今! たった今、着替えちゃったんです!」と。ちょっと残念。でも、衣装の時のKちゃんと話すのは慣れてないので、ちょっとホッとしました。

 TV番組で紹介されていたので、来たらお願いしようと思っていた、堀尾貞治+現場芸術集団「空気」さんの100円絵画を買いました。私が頼んだのは「音絵画」。作品が作られている所は見えないので分かりませんが、緑と黒のアクリル絵の具の付いた肉叩きで画用紙を叩いたような、アクションペインティング作品でした。自動販売機的な作りが分かりやすい現代感だし、待っている間も楽しくて、近くの人達とお喋りしたり、出てきた作品を見せ合ったりしました。案内の方に、「あれ、お友達だったんですか?」とか言われてしまいました。

 4Aだけを観て、4号上屋は終わった気になってしまい、中庭に向かいました。ちょうど、その時、Kちゃんが来ました。そして、私服のKちゃんに会場を案内して貰いました。

 中庭には電話ボックスがあって、それも作品で岩井成昭氏のものでした。タイトルは『波止場の伝言−million mama』で、受話器を取ると1000人のお母さんからのメッセージが聞ける物でした。Kちゃんに促されて受話器を取ると、泣きそうな女性の声が聞こえてきました。私は、あっという間にダラダラと貰い泣きしてしまい、電話ボックスを飛び出ました。「泣かされた!」とKちゃんに言うと、「どんな話だったんです? 色々な内容みたいですよ。人によっては、怒鳴られたりするみたい」と。1/1000の確率だから、おみくじみたいなものなんでしょうね。やっぱり私は、涙は涙を誘う気がしました。私は涙に好かれているでしょう。

 それから、Kちゃんのお奨めと言う事で、 Long March(ロング・マーチ)の作品、切り取られたエベレストの頂上、を観に行きました。本当にバカバカしい作品。切り取っているという合成映像もちゃんと出来ていて笑いました。でもこれは、説明して貰わないと、ちょっと分かりづらいです。音声ガイドが必要です(早めに行かないと借りられなさそう)。

 そして、ピュ〜ぴるの九官鳥へ。この九官鳥が「ピュ〜ぴる」と喋るらしいんですが、今丁度、生後7ヶ月になった所らしく(九官鳥は通常生後6ヶ月以降にならないと喋らないと言われている)、やっと最近話せるようになったらしいです。オープン当時は、全然喋らなかったらしい(苦笑)。なんなんだ! ホント、おかしい。

 「これが大好きなんです!」と言うので、Jakob Gautel & Jason Karaïdros(ジャコブ・ゴーテル&ジャゾン・カラインドロス)両氏の作品『エンジェル・ディテクター』(周囲の沈黙を感知すると透明のドームの中の明かりが灯るという作品)を一緒に観に行きました。静かになるのを待たなくてはならないので、さっきはちょっと覗いただけにしたんです。知らない人と3人で、固唾を呑んで見守ったんですが、5分くらいで閉館の音楽が鳴り始めてしまったので出てきました。「本当に大勢いて、沈黙の人垣が音を遮断した時、ぱっと明かりがついたりするんです! ぱ、ぱぱっ、ぱぁーって! それが、凄い感動なの! あぁ、康乃さんにも観て貰いたかったのに!」と、見えるように説明してくれました。

 Craig Walsh(クレイク・ウォルシュ)の倉庫を覗く人達の映像はでかくて、やっぱりこれも馬鹿で面白かったです。時間があったら、本当にずっと観ていたいです。こういうのは、時間が会った方が楽しめます。

 「光るブランコには乗りました?」と訊かれ、展示会場4Bと4Cの存在に気付きました。「まだ、平気かも!」と、2人で走って、Wolfgang Winter & Berthold Höbelt(ヴォルフガング・ヴィンター & べルトルト・ホルベルト)の作品に乗りに行きました。暗がりの中で大きくて重々しい光るブランコに乗っていると、そうじゃなくてもいつも子供みたいだと言われる私達は、小学生みたいな気分になっていきました。いい気になってずっと乗っていると、係りの人に「もう閉館ですから……」と静かに言われてしまいました。

 ちょっとしか居られませんでしたが、私は1800円の入館料以上に楽しい気分になっていました。また行こう。Kちゃん曰く、金曜の夜がお奨めだそう。でも、金曜はKちゃんのパフォーマンスは無いんですよね(あのゴルフカートは、ヤフオクで落札して貰ったらしいです。乗りたいですー。それから、毎日限定150枚で、DIVA AIR LINEのタグが貰えるそう。毎日5千人くらい入場者があるらしいので、朝一じゃないとGET出来ないじゃないの(苦笑)。Kちゃんファンは要チェックです。って、こんなに嫌がらせのように日記を書いて置いて言うのもおかしいけど)。


 帰り道、Kちゃんに『双子のゲーム2』をやるんだ〜、と言う話をしました。

康:(アートでは)尾崎旬さんに出て貰うんだ。コンタさんと尾崎さんの筋肉男対決を観て貰おうと思って。や、実際には対決しないんだけど。
K:面白そうですねー。
康:最初、キャラが被りすぎるんじゃないかって思ったんだけど、逆にそれが良いかな、って思ったんだ。2人とも身体能力を使ったパフォーマンスをするけど、片や「現代アート」、片や「お笑い」でしょう? ふたりが同じステージに出た時、観客はどう思うだろうって、それを私が見たいな、と思って。人によっては、コンタさんを「現代アートだ」と思う人が居るかも知れないし、尾崎さんを「お笑いだ」と思う人が居るかも知れない。結局、ジャンルなんて、そんなに意味のない物なんだ、ってさー。まぁ、私がジャンル、と言うものに興味がないって事でもあるんだけど。
K:あぁっ。ジャンル、困りますよね! 今日、インタヴューを受けたんですけど、インタヴュアーに「あなたにとって『アート』とは何ですか?」とか、「『アート』がというものが無かったら、あなたはこんな事をしていなかったんでしょう?」みたいな事を言われて、本当に困ったんですよ。違うんですよね。そう言う物なんて、あってもなくても私はこれをしていたって言う事なんですよ。伝わってない感じでしたけど。あ、私が、ちょっと不機嫌になっちゃった、って所もあったと思いますけど……。えへへ。
康:あはは。確かに困るし、ちょっとムッとする質問だねぇ。ジャンルってなんであるのかなぁ。

 マスコミ嫌いのKちゃんが(この間載ったVOGUEの記事は本人にとって好印象だったみたいだけど)、これ以上嫌いにならないと良いけど。


 <All Aboutでの記事:自分が後で読みたいのでリンク>http://allabout.co.jp/travel/travelyokohama/closeup/CU20051005A/index.htm