生きていると

 サトウさんは驚異的な回復力で、手術から2日で一般病棟に移動しました。本当に、心から嬉しいです。病室でのサトウさんはキッチンに居るのと同じく、お見舞いに来た人達を持ち前のユーモアとサーヴィス精神でもてなしているらしいです。

 私はこの事件が起きた直後、色々な悲しい事を思い出していました。思い出に繋がっている現在には、美しい事や素敵な事が色々あるにもかかわらず、現在起きている悲しい事を思い出しては、メソメソしたりどんよりとしていました。

 このところ、朱雀さんは私が何を考えているのか、いたのかを分かっているかの様な事を言うのですが、それは困った事に大抵当たっているのです。あの日送られてきたメールには、「生きていると悲しいことばかり……と思いながら」と書きながら、暖かい文章で、幸福の探し方が書かれていました。それは誰もが分かっている事なのに、忘れがちな事。私は、「幸せになるのを恐れないで!」とゆうさんに言われていた朱雀さんがこんな事を書くなんて、と苦笑しながら泣いてしまいました。みんな、人にはそう言うの。でも、嬉しかったです。


 この話について書き始めた時、もう一つ悲しい話を書こうとしたけど、悲しみ続ける事に飽きてしまったので、もう止めます(でもね。みんな、私の事を「猛烈な飽き性」とか言うけど、本当はそうでもないのよ。もう何日もげっそりしてたから、イイじゃない)。


 明日は、ラフェクレール食事会。テーマは『小川シェフの敬愛するヌーヴェル・キュイジーヌ黎明期の料理人たちに捧ぐフルコース - フェルナン・ポワン、トロワグロ兄弟、ポール・ボキューズアラン・シャペル、ミッシェル・ゲラール、アラン・サンドランスたちに、愛を込めて』。必ず報われる事が約束された愛が、明日私を待っているのです。とても楽しみ。