KPTA@Motion Blue YOKOHAMA

 入場整理券を16時から配布すると言うので、なるべく早く赤レンガに到着したかったんだけど無理で、化粧もそこそこに、普段着のワンピースを着て、18時、桜木町からタクシーに乗った。

私「赤レンガまでお願いします」
運「ハイ、赤レンガね。……お嬢さん、モーションブルー行くの?」
私「は? えぇ、まぁ……」
運「もーね。乗ってきた時からすぐ分かっちゃった」

 馴れ馴れし過ぎる運転手は苦手だ。ワンメーターで拘束から解かれて良かった。

 モーションブルーのカウンターに到着し、受付で39番の整理券を貰うと、予想通りの後悔に襲われた。あぁ、やっぱりもっと早く来れば良かった……。そして、テンションが上がらない。朝からジュースしか飲んでいないのが悪いに違いない。

 とは言え、化粧くらいちゃんとして置かなくては、と思い直し化粧室へ。今日は、松村君の妹で、JUMEAUX OBSCENESの撮影時メイクを担当してくれている、美の申し子真知代ちゃんが来る。彼女の言った言葉の中で私の好きな言葉の一つ、「睫毛は上げて上げすぎる事はありません」を思い出し、バサバサの睫毛を作ろうと気合を入れ直した。

 モーションブルーのカウンターにいた女性の化粧が濃かったので、「あの位いいのか」と思い、ステージ並みに濃くする事に。しかし、つけ睫毛は持ってきていないので、1年位前に買って、一度も使っていない繊維入り睫毛下地を丁寧に塗り、つけ睫毛風のヴォリュームにした。「よし。後は仕上げだ」と言う所でアクシデント。塗ったマスカラの半分が、ビューラーに! 愕然……。コギャル達は一体どうやってあの睫毛を作っているのだ。本当に尊敬する。やりなおし、全然想像していた完成図とは違う物になったが、なんとか『酷い失敗』から『頑張ったね』程度に仕上がる。

 網タイツを履き、スリップドレスに着替え、それでも時間が余っているので、CA4LAで秋冬物のキャスケットを買う。レジの女の子の睫毛が、驚異のバランスを保っているのを見、思わず質問。

私「あの、すみません。全然、お店の事とは関係ない話なんですが……、マスカラを上手に仕上げるのってどうしたらいいんですか?」
店員「えっ?」
私「ビューラーって、どのタイミングで使うもんなんでしょう……」
店員「あー。最初にある程度、上げちゃってぇ。それから塗るんですよ。(私の顔を下からマジマジと見上げながら)ブラシに沢山付いてると使いにくいので、ティッシュなんかで落として使うと良いですよ」
私「成る程。あははは。普段、マスカラを滅多に使わないからよく分からなくて。どうもありがとう!」

 化粧とは、本当に奥が深い……。やっぱ、日々鍛錬あるのみなんだろうな。今日もまた勉強になった。


 入場の時間になり、エントランスに着くと、Lちゃん、A君、松村兄妹が既に揃っていた。Lちゃんは予め台湾の方だと伺っていたのだけど、本当に日本語が堪能で、だいぶ長く会話をしないと分からない程だった。漆黒の長い髪に、胸元が広く開きスパンコールの着いたクリーム色のドレスをとても知的に着こなしていた。みんなでお喋りをしていると、1stを観終わったMASAさんともとまりさんが出てきたのでちょっとだけお喋り。真知代ちゃんに「イタリアンマフィアみたい。カッコイイ〜♪」と言われて、もとまりさんは嬉しそうにしていた。

 番号が呼ばれ店内に入る。当たり前だが、良い席は埋まっている。それでも、柔らかい白い椅子の席に案内されたのを、良かったと思う事にした。元々、あまり料理の評判の良くないこの店なのだが、みんな空腹だったので料理を頼む事にした。それが今現在、これを書いている私の胃を、倦怠感を伴いつつ、もたれさせる原因となった訳なのだが、詳しくは書かない。もっと、失敗しにくい料理をメニューに載せるべきだと思う。もうちょっと書くと、作り置きは良いとしても、素材を最終的に合わせるタイミングをもうちょっと考えてくれ(詳しく書かないとか言いつつ、結構書いてるか)。


 ぺぺ・トルメント・アズカラール(名前が覚えられない。DCPRGも覚えるのに半年くらいかかった・苦笑)の演奏の事を書こう。前半の方は、ストリングスにかけているエフェクトがちょっと固くて、もっと生っぽい方が好みだな、と思った。殆どの曲に於いてバンドネオンがフィーチャーされていて、私としてはもっと他の方のソロも聴いてみたかったな、と思った。と言うか、南さんのソロが短すぎだと思う。カヒミ姫の歌は、今まで録音した物も含めて聴いた彼女の歌の中で、一番瑞々しくて美しかった。素敵だった。KPTAは、官能的でドラマチック。12月が待ち遠しい。

 アンコール前に、2度目のメンバー紹介をした。菊地さんは、「調子の良い時は“菊地 成孔”です(苦笑)。調子の悪い時もあるんです。そう言う時はもう、菊地 成孔なんだか自分で不安なんです。ドッペルゲンガー(云々)」と言っていた。そう言えば、思い出すと、自分の名前を言っている回数より、やや少ない位の回数『アーノルド・シュワルツェネガーです』と言っている様な気がする。シュワルツェネガーと言っている時はどんな調子なんだろう(まぁ、とても良いとは思えないですが)。今日の声は、元気そうだった(私の席からは、ステージが殆ど見えなかったので)。

 当日のセットリスト。ピロスエさんの所からコピペ。


01. アルトサックスとハープのデュエット
02. 京マチ子の夜
03. 南米のエリザベス・テイラー
04. 恋の面影 (with カヒミ・カリィ)
05. パリのエリザベス・テイラー(存在しない)
06. バンドネオンのソロ
07. ユー・ドント・ノー・ホワット・ラヴ・イズ
08. ホルヘ・ルイス・ボルヘス
09. ルペ・ベレスの葬儀
10. イズファハン
ENCORE
01. クレイジー・ヒー・コールズ・ミー (with カヒミ・カリィ)
02. ラス・メイヤー、聞いてくれ


 ソファには、ステージ側からLちゃん、私、真知代ちゃんという順に座った。とにかく、真知代ちゃんはよく喋る。それが面白いから始末に負えないと思う。兄松村君はというとほぼ無視で、テーブルの点対称の席に座り、「俺は逃げたから」と言った。と言う事で、A君が主に被害(笑)を受けていた。

 まぁ、美女の我が儘は被害とは言わないのだろう。A君は、正に食べようとしていたパテが、手の上から消え去ってもニコニコと笑っていた。そして、「真知代ちゃんって、ホント、まっちゃんの妹とは思えないな。……綺麗で」と言うと、真知代ちゃんは微笑んで「んふふ♪ 言われ慣れてる」と答えるのだった。そして、「ねーねー、JAZZって格好いいんだねぇ!」と屈託無い声で何度も言った。

 反対側のLちゃんはと言うと、ブルームーンに酔ったのか、南米のエリザベステーラーの時点でもう眠そうにしていた。私は、彼女に「どうして、今日のライヴに来ようって思ったの?」と訊くと、「え? だって、松村さんが出ると思ったから」と答え、私をうっとりさせた。今日、Lちゃんは、松村君がステージに立つと思ったから、この横浜の赤レンガまで遠路やって来て、チャージ5,250円(料理別)を支払うんだ。いいなぁ。そんなLちゃんが、ユー・ドント・ノー・ホワット・ラヴ・イズで席を立ち、お手洗いに行っている間に、松村君にその話をした。Lちゃんを誘ったのは、A君だったらしく、「ちゃんと伝えてくれないと困るよ」と苦笑いしながら、A君を責めていた。ルペ・ベレスには戻ってきたLちゃんは、「酔っちゃった。さっき、ちょっと眠っちゃったよ」と楽しそうに笑って寄り掛かってきた。両手に花だなぁ、と思った。


 前に、菊地さんの日記で紹介されていたファンメールで、「菊地さんのライヴの後の女子は(エロティックな空気を纏う事になるのか)、ナンパされる率が上がる」と言うような事を書いていて、「確かにそうかもなぁ」と思っていたのだが、本当に久し振りに行ったのでそんな事はすっかり忘れていた。ライヴの後、実家に帰ったのだが、駅から家までの15分の道のりで黒人に腕を引っ張られたのだ(別に蹴って返したから良いんですが)。赤レンガから駅までの道のりで、Lちゃんに「(菊地さんがMCで夏に出る危険な魚を紹介していた)電気サバって初めて聞いた。どんな魚なの?」と真顔で質問されたりして、あまりに可愛かったので、色々嘘の話をしたついでに、「私の実家は南部みたいな所。NYで言うならソーホー(笑)」等と下らない話をするんじゃなかった、そんな事言ってるから、訳の分からない日本語を使う男の友達の家に連れて行かれそうになるのだ、とこの日何度目か分からない後悔をした。そして、「帰り道、危ないから友達の店に行って、送って貰う」と言って帰った真知代ちゃんの判断は正しいと思った。次回からは、必ず車を呼ぼうと思った。