「お嬢だん」を観る

 確か14年前だったと思う。日本テレビの深夜番組で、中尊寺主演ドラマ「お嬢だん」をやった。

 部長役きたろうさん、お局の岡村さん役重田千穂子さん、受付嬢役原律子さん、データマン役で竹熊健太郎さんが出て居た。

 私はこのロケのオフィス部分だけ見学に行った。丸の内と言う設定になっているけど、実際の撮影は池袋サンシャイン内、電通のオフィスだった。

 毎度の事だけど、姉貴は「見においで。おしゃれをして」と言い、確か私はY'sの青いワンピースを着、一緒に行った石井さん(私は彼女が江戸川乱歩の全著書読破してる事を尊敬していて、彼女が姉貴のファンだと言うので、一緒に行った)は、ピンキー・アンド・ダイアンの白いワンピースを着て居た。

 姉貴は石井さんに、「高校生がピンダイなんて、生意気なんだよっ!」って笑いながら言うと、石井さんは、「姉の借りものです」と小さな声で言った。

 演技をちゃんと勉強して来た方々の中で、姉貴は自分の生み出したキャラクターを演じて居た。持ち前のサービス精神と舞台根性で、文字通り“ぬけぬけ”とやり通して居た。私は見ては居たけど、実際の目玉は後頭部に付いている気がして居たし、心臓は喉に付いている気がした。

 私のドキドキ感をよそに、姉貴はきたろうさんに、キャラクターの指示をバシバシ出して居た。

ゆ「この部長は、もっと、もっと情けない感じで!」
き「僕は普通にして居ても情けない感じだから、過剰だと思う」
ゆ「や、そんな事無いです!」

 主人公、白井真子と姉貴は、確かに被る所は沢山あるけど(苦笑)、妹、薫子と私に被る所は無い。無いと思う。他に薫子的な立場の女の子が居たのか、私にそうなって欲しかったのか、よく分からない。

 昔、桜沢エリカさんの従妹と4人で夜遊びに行った事があったけど、私は本当に真面目でつまらない人間だったので、エリカさんの従妹と話を合わせる事が出来なかった。私は、才能が無いな、とちょっと落ち込んだ。

 姉貴がくれた、このビデオテープには他に、姉貴と岡崎京子さん、原さんが共演した、TDKのCM、アニメーションと声で参加した、サロンパスのCMが入って居て、本当に懐かしかった。映像もそうだけど、メイクやファッションが……。80年代そのもの(苦笑)。

 姉貴が出演したCMで、確かイムラヤのアズキバーだったと思う、自宅がロケ地になっているのがある。

 この話が本当か知らないが、私の前の会社の先輩、佐久間進さんが撮影した写真が良かったからCMが決まったんだよ。「お礼を言っておいて」と何度も言われた。姉貴は忘れっぽい人だから、きっとこの話を一度しかしなかったと思ってると思う。でも私は言われる度に先輩にお礼を言いに行ったよ。先輩は、ちょっと困った顔をしてた。

 私は、何かで期待に応えられた事があったのか。否、いつまでも、あの人の“出来ない子ちゃん”で居たかったんだ。