他人の香り 

 会社でOさんが席に来て、「最近、香水付けて無いね。私が、“Remember Me”が嫌いって言ったから?」と言った。

 最近と言っても、一滴も付けて無いのはこの3日くらい。とはいえ、2〜3週間前にOさんが嫌いと言ってからは、あれを会社には付けて行って無いのは確かだった。でも、嫌いだという話は私にしたのではなく、他の人にだったのに。

 「あー、確かに付けてませんね」と言うと、彼女は訳の分からない言い訳を始めた。「いや、別に嫌悪感を抱くって程嫌いって言う訳じゃなくて、自分が付ける香りとしては駄目だって意味だったんだよ」。

 香水が大好きだというOさんの付ける量は少ない。人が付けて居るのを嗅ぐのが好きなのかな。“かな”、じゃないな。絶対そうに違いない。彼女は、仕事中にしょっちゅう私の髪を撫でに来る。その時に嗅いでいるのだろう。