Agua de beber【3】

 取り敢えず、通して歌ったのを聴いて、先生は「うーん」と腕組みをして、黙っていました。暫くして、絞り出た言葉は、「Not bad..., but not so good」。ええ。おっしゃりたい事は、よーーくよーーく解ります。

 「歌う事の意味って」とか、「詩の情景は」とかについてのお話。先生の押しつけではなく、私の考えを進めて行く為のキーワードのような物を、ポツポツと置いて行く様な感じで。

 もう話の流れで、全編フェイクで歌う様な羽目になりました。嘘。違います。そんな事は言われてませんけど、もう、そう歌うしか残る道は無いという雰囲気を感じ……。同じか(苦笑)。

 たっぷり脂汗をかきました。何年か前、何度か自分のフェイクを録音した物を聴いた事があるんですけど、大っ嫌いで! なるべくならやりたくない、避けて通りたいと思っていたんです。でも確かに、歌の中にそういう生き物的な部分がある方が、良いんでしょうね。先生の表情を見て、そう思いました。「もっと沢山実験して、その上に本番があれば良いんだと思うよ」って。