前から不思議に思っていた事

 祖母が「煙草を買ってきて」と言う時、必ず一箱3,000円くれる。何故、3,000円なのか、前から不思議に思っていたのだが、最近、姉貴がその値段でで売っていたからなのではないか、と言う気になってきた。祖母は最近ちょっと呆けていて、煙草は3,000円だと思い込んでいる所を見ると、古い記憶での値段設定なのではないかと思えてきたのだ。

 姉貴が高校生か大学生の頃だったと思う。「あー、お小遣いが無くなって来ちゃった。おばあちゃんに煙草売って稼ごう」と言っていた。私はそれを聞いて、「稼ぐって?」と思っていたのだけど、当時煙草は200円位だったから、それを3,000円で売れば、確かに稼げる。本当かどうかは分からないけど!

 私は三味線の先生だった祖母が家事をやっている所を殆ど見た事が無い。料理などはお弟子さんがやっていたようだし。一度だけ記憶にあるのが、両親が旅行に行った時の朝、秋刀魚を焼いてくれようとした時の事。魚から炎と煙が上がり、右往左往する祖母に小学生だった私は「いいから、座ってて!」と叫んだ。あの祖母なら、本当の本気で煙草が3,000円だと思っていたのかも知れない。