昨日のCayの事

 「行ったら悲しくなるのは分かってる」そう言うと、松村君は、「あはは。それは、いいね」とちょっと面白がっている風でした。

 黒子みたいな恰好に、GUERLANのSAMSARAをほんの少しだけ付け、私はCayに向かいました。フロイティアン(フロイト派)である菊地成孔氏に対抗する為に、ユンギアンとしてSAMSARA[輪廻]を味方にして行こう(言う程、私はユング派では無いですけど)、何て言う気持ちは微塵もありませんでしたが……。でも、10年前は、香水瓶の蓋を触るのも嫌だったオリエンタル・ノートのパフュームを、いただいた物とはいえ、今はこうして選んで付けているのですから不思議です。私に似合っているかどうかは別ですけれども。

 会場に着くと、ほんの数分前に着いたという松村君が、ちゃんとスーツを着、クロークの横に立っていました。万全の愉しむ体勢です。それを見たら、私ももう少しましな恰好をしてくれば良かったかな、と軽く後悔をしたのですが、出掛ける時は、そこまでテンションが上げられなかったのですから仕方がありません。

 会場には、明らかに「『スペインの宇宙食』で、貴方を初めて知りました」と菊地さんの日記で書かれている様な方々が、ちらほらといらしていて、本当に楽しそうに、これから目の前に起きる出来事を、あれこれ想像されては、笑い声を立てていらっしゃいました。私は、私の中の事も気になっていましたが、彼女達の事も同じくらい気になってしまいました。楽しい気分で。

 SPANK HAPPYの出番。瞳ちゃんは、黒地に薔薇か石楠花の刺繍の入ったチャイナドレスを着て、菊地さんは、黒いスーツに白いアスコット・カラーのシャツ。瞳ちゃんは、綺麗にセットした髪と化粧で、菊地さんは、ボサボサ髪にダラダラの襟元。今日は、美と醜の差が、一段と激しく感じました。勿論、これがこのユニットの見所の一つでもある所なのですが……。

 いつもの様に、Thierry MuglerのANGELを撒き、2ndアルバムから、1〜5曲を流し(リップシンクですから)、間に1stアルバムから、「フォー・エヴァー・モーツァルト」、「楽しい知識/Le gai savoir」の2曲を流しました。今回、1stと2ndのパフォーマンスをサンドイッチで見る事が出来て思ったのですが、オケは2ndの方が好きで、パフォーマンスは1stの方が好きです。どっちも好きだと言う事は変わりないんですけど。

 アンコールの時に、会話しているお二人を見て、前回のライヴで悲しくて悲しくて仕方なくなってしまったのは、「MCが無くなってしまった事が一番の原因だ」と自己分析していたのですが、それは間違いだという事が分かりました。喋らない(喋らせない)所が、面白かったです(じゃぁ、どうして前回……)。アンコールの最後の曲、「ヴィーナスからアントワネット」までの最後の方で、唇の前に立てた人差し指を当てたお二人が、キスの真似事をしたのですが……。間近で見なくて良かった。多分、見てたら気当たりして、具合悪くなっただろうな、きっと。

 会場から出ようとする人の動きに乗って、ANGELがもう一度ふわりと薫って、良い感じでした。これからも、香水のかからない距離で見る事にしよう。

 松村君と、渋谷まで歩く道すがら色々と話したのですが(「それは私以外の人には絶対に言っちゃ駄目」と怒られた可笑しな会話を含む)、簡単に言うと、私はもっともっと、綺麗になる為に必死で努力しなきゃいけないって事と、お金が沢山要るなって事が、目の前の問題なんだな、と思いました。

 今後海外進出するSPANK HAPPYだそうですが、面白い展開になると良いな。フランスに行く日が決まって、スケジュールが合えば、見に行きたいなぁ。同行者は、絶対嫌がると思うけど……。